近年注目される認知症ケアに「回想法」というものがあります。
回想法というのは「過去の出来事などを思い出してもらうことで、認知症の進行を遅らせたり精神的な安定に繋げたりする」療法です。
今回は、回想法の効果とやり方・注意点について紹介します。
回想法の効果
回想法では過去の懐かしい思い出を語り合ったり、誰かに話したりしてもらいます。
それだけで意外にも多くの効果がみられます。
効果の内容は以下の通りです。
過去の出来事などを思い出す際、記憶を呼び起こすために脳を利用します。
脳が活発化することで、認知症の進行を抑制・治療に効果があるのです。
回想法を行うことで、介護者が話をよく聞いてあげる機会が増えます。
そのため、介護者と高齢者の関係が良くなるケースが多いです。
またグループで回想法を行う際には、他の高齢者と話すきっかけにもなりますので施設内の人間関係が良くなるメリットがあります。
回想法の経験を重ねることで、他人に共感してもらうことが増えます。
回想法で承認欲求(他人に承認されたい欲求)が満たされた高齢者は、普段の生活にも落ち着きが見られるようになるのです。
回想法の手順
回想法には2つの方法があります。
「個人回想法」と「グループ回想法」です。
・個人回想法
高齢者とカウンセラーが1対1になって行うスタイルです。
提出したキーワードに沿って、高齢者の方に昔話をしてもらいます。
リハビリのように、事前に日時を決めて行うものと、日常生活の中で行うものの2種類があります。
・グループ回想法
6~8人で1つのグループを作って行う方法です。
レクリエーション的な要素も含めることもできます。
グループのメンバーで童謡を歌ったり、メンコのような懐かしの遊びを行ったりできるのです。
・症状によっては個人回想法に限定する
精神的に不安定な方や記憶障害を持っている方は、個人回想法に限定したほうが良いでしょう。
また参加を呼びかける際は、嫌なことは話さなくて良いと説明してあげることも大切です。
・聞いた内容をよそでは話さない
参加者の過去に触れるのが中心の治療法です。
話される内容はプライベートな出来事ですので、周りの方に触れ回るようなことはやめておきましょう。
他の参加者にも同様のことを確認しておいたほうが良いでしょう。
・批判したり、価値観を押し付けたりするのはNG
回想法は、他人の話を素直に聞いてあげることで成り立つ方法です。
他人の話の腰を折ったり、批判したりすることはやめましょう。
たとえ話の内容につじつまが合わなくても、話している方の思いを汲み取ってあげることが大事です。
回想法は薬を使う治療法とは異なり、リスクが非常に少ない治療法です。
体験した方の心の安定にも繋がりますし、周りの方と良い関係を築くというメリットがあります。
現在では回想法において、昔の電化製品や風景といった写真・イラストを見せるといった方法も採られるようになりました。
参考にしても良いと思います。
介護職の方は、一度回想法を取り入れてみてはいかがでしょうか。