日本の医療は「国民皆保険制度」で支えられています。
しかし、団塊の世代が後期高齢者の仲間入りを果たす2025年になると、医療現場を支える看護師は現在より50万人ほど拡充する必要があるようです。
10年間で50万人も増員するには、これまで通りに看護師を育成するだけでは足りません。
しかし、この不足を補えなければ日本の誇る国民皆保険制度は存続すら難しくなるでしょう。
そこで、看護師の勤務形態にさまざまな選択肢を作り出して、
有資格者それぞれの事情に応じて働き方を選べる仕組みが考案されました。
厚生労働省が行った調査によると、正社員として働いていた現場から離職した看護師が次に望む雇用形態は、約30%が正社員であるのに対して、より勤務時間が短いパート、アルバイト、派遣が約50%に上ります。
結婚や出産などによる生活環境の変化によって、多くの看護師がそれまで通りの拘束時間では勤務を続けられない状況になっているのです。
しかし、病院や介護施設など、看護師の受け入れ先となる施設ではやはり正社員としての登用を希望する割合が高く、多くの有資格者が看護師としての現場復帰を果たせずにいました。
「短時間常勤」という新たな勤務形態は、勤務時間を4時間から6時間の中で選べる短時間制職員制度です。
この勤務形態に加えて看護師等人材確保促進法の改正が今年10月に実施されることで、看護師の離職率を下げ、また、約70万人に及ぶ埋もれた人材を掘り起こし、現場に呼び戻す打開策になるのではないかと期待されています。
実際に短時間常勤制度を導入した病院では、看護師の出産、育児のための離職率が半減したという実績があるそうです。
日本看護協会は2012年度に看護師の勤務実態について調査を行ったところ、看護師の資格を有する225万人のうち、3割以上が資格を活かした職に就いていないということが判明しました。
離職した看護師は、ブランクが長くなればなるほど現場復帰が難しくなります。
出産、育児を理由として離職した看護師の場合は5年程度で現場復帰を目指すことが多いようです。
近年の医術は目覚ましい速度で進歩し、変化を続けていますので、
5年分の遅れを取り戻すにはほとんど最初からやり直すような気持ちで勉強に取り組む必要があるでしょう。
それには座学はもちろんですが、現場での実習が欠かせません。
個人での技術、知識習得には限界があります。
10月の法改正には、看護師の離職時に都道府県ナースセンターへの届け出を促し、復帰支援のサポートを受けやすくする制度が盛り込まれています。
これらの制度によって離職率を引き下げ、復帰しやすい環境が整えば、看護師人口の確保も夢ではないでしょう。
看護師の働き方がよりフレキシブルに変化して行けば、今活躍している看護師にとってもさらに働きやすい環境になるはずです。
人生のターニングポイントで看護師としての働き方に迷った時には、決断を下す前にこうした制度改革にアンテナを張ってみる事をおすすめします。