認知症の患者さんには、突然食事を拒否するというケースがあります。
言うまでもなく毎日の食事は必要不可欠なものですから、状況に応じて適切に対処をする必要があります。
ここでは、認知症の患者さんが、食事を拒否したときの対処法についてご紹介します。
・食べ物を認識できないケース
認知症の進行によって、食べ物が認識できなくなってしまう「失認」と呼ばれる症状があります。
高齢者には頻繁に見られる症状ですが、失認によって食べ物を指でいじったり、投げたり踏んだりという行動が起こることもあります。
こういった場合には「これは美味しい◯◯ですよ」などと声かけをしましょう。
さらに、目の前で美味しそうに食べ、真似をして食べてもらうように促すのも有効です。
・食べ方が分からないケース
「失認」に近い症状で、食べ物は認識できても食べ方がわからなくなっているというケースもあります。
これは「失行」と言って、やはり高齢者によくみられる症状です。
失行も失認と同じように積極的に声かけをし、実際に食べている様子を見せるなどの対応をしましょう。
・体調不良で食べられないケース
食べ物や食べ方は分かっていても、体の調子が悪く、それを伝えられないために食事拒否をしているというパターンもあります。
体調不良による食事拒否で最も多くみられるのは、ものを飲み込みにくい嚥下(えんげ)障害です。
嚥下機能低下の対処法としては、飲み込みやすい食事に切り替えたり、流動食を流し込める器具を取り入れるなどの方法があります。
また、発熱や口内炎、便秘や虫歯といった体調不良で食事を嫌がっている場合もあります。
食事拒否に対しては、体調をよく観察した上で対処するのが良いですね。
・その他にも色々な原因が考えられる
高齢者に限らず、誰にでも気分が落ち込むことや気がのらないことはあります。
食事拒否の原因が見当たらない場合、うつ状態や落ち込みで、食事をしたくないのかもしれません。
気分が沈んで食べられない場合は、「味見をお願いします」や「作りすぎたので食べてくれませんか?」など声かけを工夫してみてください。
一口だけでも食べてもらえればその後も食べてくれることがあります。
また、薬の影響で眠くなり、食事を拒否しているというケースも考えられます。
眠気の原因には、薬の飲み合わせの影響なども考えられます。
毎回同じ薬局で工夫してもらうなど、対策をとりましょう。
いずれの場合も、食事を無理矢理食べさせたり、食べないからと叱ったりするのはやめましょう。
食事はつまらなくイヤなものと感じ、意地になってますます食べなくなってしまうこともあるので注意が必要です。
意地になって、無理矢理の食事させる行為は誤嚥(ごえん)してしまう恐れがあります。
食べ物が気管に入ると誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があるため、絶対にやめましょう。
認知症の患者さんが食事拒否をする原因や理由はさまざまですが、いずれの場合でも早急に対応をすることが肝心です。
あくまで「食事はおいしく楽しいもの」という基本を忘れずに向き合っていきたいものですね。